これまでのまとめ
日干の強弱=身強/身弱は、社会生活で使う人間関係の気のエネルギー(以下「社会生活のエネルギー」)で、年支・月支・日支の五行との生剋比でからもとめられました。
身強/身弱にはそれぞれ得手/不得手があって、身強はヒト・モノ・カネとかかわる現実的な仕事に強く現実を変えていくタイプ、身弱は逆に精神的な仕事に強く現実に合わせていくタイプ。
そこに、人生の四季=大運や年運/歳運の干支がめぐって、命式に影響を及ぼします。
すなわち、中庸(バランスがとれている状態)が一番だから、身強は日干が休・囚・死になる五行の地支、身弱は旺・相になる五行の地支がめぐる時期が吉(運がよい)。
以上が陰陽五行論にもとづく、五行の生剋比のみによるシンプルな鑑定です。
でもね、この時期は運がよい/悪いだけの鑑定ってあまり意味ないよね、というのが前回の問題提起でした。
では、今回紹介したシンプルな鑑定は、どのように活用すれば効果的なのでしょうか?
吉凶よりも開運
吉凶=運がよい/悪いという判断は、占いの入り口に過ぎません。
運がよかったら何もしなくても上手くいくのか、逆に運が悪かったら何をしても上手くいかないのか、そんなバカげたことあるか!というのは、冷静に考えたらわかります。
重要なのは、何をすべきで何をすべきではないのか、いつどのようなことに注意すべきなのか、といった運勢にもとづく今後の行動指針を知ることではないでしょうか。
開運という言葉をよく耳にしますが、玄関に竜の置物を置くとか、自分に合った石を買うとか、赤い服を着るとか、東の方角にある神社に行ってお参りするとか、そんなお手軽なことで、運は本当に開けるのでしょうか。
一時的には運がよくなることはあるかもしれませんし、納得できる理屈があるのであれば、私もそのような占いを否定はしません。
むしろもっと研究して積極的に活用したいと思います。
しかし、人生の運を開くということであれば、これまでを振り返って、改めるべきところを改めていくほかなく、
命術(算命学・四柱推命)の重要な使命は、そのような人生の開運のアドバイスにあると、私は思います。
宿命と現実
命術は、命式の良し悪しを鑑定して、命式の良いひと(貴命とか上格とか言います)は運が良いひと、命式の悪いひと(貧命とか下格とか言います)は運が悪いひと、と鑑定するのが一般的です。
でも「それってどうなのー?!」「そもそも、占い師って、他人の人生を貴命/上格とか貧命/下格とか判断できる立場なの?!」と、私は思います。
鑑定経験を積んでいればわかりますが、貴命/上格だって人生に失敗しているひとはたくさんいますし、貧命/下格だって人生に成功しているひとはたくさんいます。
それを何とか理論どおりにしようとして理論にいろいろ手を加えるから、複雑怪奇で矛盾だらけの理論になるし、流派もいろいろと分かれるのだと思います。
そうではなくて、そのひとは宿命をどのように活かしているのかにもっと注目べきです。
宿命は人生の大枠を決めるものだと思いますが、同時に自由度は大きくて、
同じ生年月日・性別=同じ宿命なのに違う人生になるのは、それをどのように活かしているのかがそれぞれで違っているからです。
それに、宿命という人生の大枠から外れているひとだって普通にいますが、
そういうひとは(私の研究では)やがて運を落として不本意な人生をおくることが多いように思います。
サボテンは日陰に置くと枯れますでしょ?
逆に、紫陽花(あじさい)は日向に置くと枯れますでしょ?
人間も自然も、宿命と違う生きかたをしていたら、やがては淘汰されます。
後天運を活かす
では、身強/身弱は、どのように後天運を活かしていけばよいのか?
まずは、いまの自分の生きかたに解決すべき問題がないかを振り返ってみましょう。
身強/身弱は生きかたのベースなので、問題の原因はその使いかたにあるということもよくあります。
身強はエネルギーを出して現実的な成果を志向する宿命なので、たとえば、成果を得られずにくすぶっている状況にいたら、チャレンジできる舞台を模索すべきでしょう。
身弱はエネルギーを入れて精神的な満足を志向する宿命なので、たとえば、競争を強いられて満足を得られない環境にいたら、立ち止まって内省する機会を模索すべきでしょう。
あるいは、逆に
身強のエネルギーがさらに強くなると、自己が肥大して、他人を低くみてしまう傾向が、
身弱のエネルギーがさらに弱くなると、自己が委縮して、他人を高くみてしまう傾向があります。
どちらもエネルギーのバランスが崩れて、社会生活に支障が出るというか、いずれ大きな揺り戻しが起こるかもしれません。
そのうえで、後天運を活用しましょう。
後天運で旺・相になる五行の地支が周ると日干=自分のエネルギーは強く、休・囚・死になる五行の地支が周ると弱くなります。
特に大運は10年続くので影響は大きく、命式の身強/身弱も大運のエネルギーにひっぱられがちです。
だから、身強は、旺・相になる五行の地支が周る大運では身強の傾向が促されるので、
身強のエネルギーを発揮できているひとは強くなりすぎないように注意が必要ですし、
あまり発揮できていないひとは現実的な目標にチャレンジしやすくなるチャンスかもしれません。
逆に、休・囚・死になる五行の地支が周ると身強の傾向が抑えられるので、
身強のエネルギーを発揮できているひとはアウトプットとインプットのバランスがよく活躍が期待できるかもしれませんし、
あまり発揮できていないひとはながされて自分を見失わないように注意が必要です。
吉凶だけを観るのではなく、意味を考えながら宿命と現実を観て今後の処世のヒントにするというのが、後天運を活かすということだと思います。
大谷翔平氏と高木美帆氏
運のよいひとは、心の声にしたがって、自分の宿命を上手に活かしているひとです。
大谷翔平氏は、高校の寮生活で「何が正しいのかを考えて行動することの重要性」「先入観を捨てることで不可能が可能になること」を学んだのが転機になったといいます。
動く前に考える身弱の強みを活かして、大運の強いエネルギーに支えられながら、いまの活躍があるのでしょう。
いきなり大リーグという厳しい環境ではなく、日本で手厚いサポートを受けながら二刀流に挑戦できたことも、身弱の彼にとってはよかったと思います。
一方、高木美帆氏の転機は、おそらく、ソチオリンピックの代表落選でしょう。
このときに結果に執着することの大切さを悟り「闘争心が芽生えた」と語っていますが、同時に死の大運、すなわち、強い自我を抑えてずっと練習に打ち込んできたことで、いまの活躍があるのでしょう。
彼女は、昨年からナショナル・チームを離れて、コーチと二人三脚で練習に励んでいるといいます。
活動資金もみずから集めなければいけない厳しい環境ですが、身強の彼女には合っていると思います。
つぎのオリンピックでは、さらなる飛躍が期待できるでしょう。