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人生後半の処世術について考えます

詐欺師の人生⑦

彼をカネ儲けに走らせたのは、(貧しい生い立ちのほかに)当時の時代背景もあるでしょう。

周りがソコソコ豊かになっていく「一億総中流」の時代にあって、自分は損しているという想いから、一獲千金を夢見て博打みたいな仕事をする。「楽して稼いで何が悪い」という雰囲気が蔓延していた時代。彼は、そんな時代の先端で生きてきたといえるのかもしれません。

 

ただ不思議なのは、あれだけの組織的な詐欺を主導しながら、巨悪やカリスマといった雰囲気が彼からは感じられないことです。もしかしたら、彼は祭り上げられただけだったのかもしれません。幹部社員たちは1,000万円もの月給をもらっていたのに対して、彼の生活は質素そのものだったようです。それは、彼が住んでいた(殺された)マンションを見てもわかります。幹部社員たちのなかには、後に巨額詐欺事件で逮捕されたひとや飲食チェーンを起業して株式公開したひともいます。悪知恵の働くひとたちがカネの臭いを嗅ぎつけて集まったのが豊田商事だったのでしょう。

 

彼が殺された時の所持金は、たった711円。目ぼしい遺品は、ブラウン管テレビとカラオケセット、レコードと本が100冊ほどで、カネ儲けと田中角栄に関する本がほとんどだったそうです。