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人生後半の処世術について考えます

宿命と時間⑤

後天運では、大運の干支から人生の20年ごとのテーマを知ることもできます。

たとえば、渡邉恒雄氏の場合、日干は己=土で、23~42歳は火だから習得本能、43~62歳は土だから守備本能、63~82歳は金だから伝達本能がテーマの大運になります。

すなわち、まずは古い価値(学問、道徳、社会など)を辛抱づよく学び、次に「汝なすべし」という古い価値に「われは欲する」と闘いを挑み、そして新しい価値を生みだしていく・・・ニーチェのいう駱駝(らくだ)・獅子・幼な子という精神の三段の変化です。

そして、氏は、そのように人生を歩んでこられたように思います。若いときは権力者に仕えてひたすら力を蓄え、中年になると保守の理想を掲げて闘いを挑み、年老いてからは想う存分に力をふるう・・・一介の政治記者から巨大メディアのトップになった氏の人生は、評価はさまざまでしょうが、とても勉強になります。

 

さて、氏の人生のターニング・ポイントは、23歳の読売新聞への入社でしょう。この年から丙申の大運に入りましたが、丙申と氏の宿命の年干支の丙寅は、六十ある干支のなかでもまったく正反対の関係にあります(納音)。

丙は日干の己からみて火生土で習得本能になりますが、これまでの習得本能とはまったく異なる発揮をする気が流れている、すなわち、習得本能をどう発揮していくべきか、改めるべきときに来ていますよ、ということを暗示しています。

氏は、東大で哲学を学び、いまでも新進気鋭の哲学者の著書には必ず目を通すそうです。同時に、天皇制廃止のために共産党に入党して活動しますが、独自の主張を掲げて支持を広げていったことが嫌気されて、共産党を除名になります。

その氏がなぜ、金と権力にまみれた政界で暗躍し、政界のフィクサーといわれるまでになったのか・・・そこには、青臭い理想から離れて、「自分はトップになる、そのために頭をつかう」という覚悟があったからだと思います。

そして、その背景には、父親を亡くした幼い頃に母親から叱咤されていた「お前は総領だ・・・勉強して偉くならないかん」という言葉があったのではないでしょうか。氏の人生は、この言葉に貫かれているように思います。