THIS IS YOUR LIFE!

人生後半の処世術について考えます

【講座メモ】五行論の応用

 

五行論は役に立つ?

森羅万象=この世のもの/ことは、木・火・土・金・水の五つの気で成り立っていて、それらの間には相生/相剋/比和の力が働いている、というのが五行論の主張でした。

科学にはないユニークな発想ですよね。

 

でも、森羅万象をどうやって五つに分類するのでしょう?

木・火・土・金・水のアナロジー(類推)で考えるといっても、

アナロジーが効かないカテゴリーがほとんどなのではないでしょうか?

占いのための「陰陽五行」無料講座(第3回)五行論とアナロジー思考 - THIS IS YOUR LIFE!に掲載した五行の表を再度見てみましょう。

色なら、木は青(青葉)、火は赤・・・説明は独特ですが、何となくわかります。

季節なら、春は草木が芽吹き、夏は陽が照って・・・これも説明は独特ですが、何となくわかります。

方角なら、春には東から風が吹き(東風)・・・これも(古代中国の自然哲学の発祥の地である)中原では、そうだったのでしょう。

でも、臓器では肝がなぜ木なのか、五官では目がなぜ木なのか、どう考えても木とのアナロジーでは説明がつかないように思います。

そもそも、木・火・土・金・水という基準が、いろんなもの/ことを分類するには具体的すぎて、役に立ちません。

それに、全体を漏れなくダブりなく分類する(MECE)なら、二つの対称軸を立てて四つとかにするほうが論理的です。

五行論って、発想はユニークだけど、本当に役に立つのでしょうか?

 

五行論の誤解

まず、五行論の目的は、この世界の成り立ちを説明することでも、この世界を分類することでもありません。

いろいろなもの/ことにおいて、われわれ人間に重要な五つの要素に注目しよう、というのが五行論なんです。

あくまで中心は人間にあって、人間から離れた純粋な自然の観察には興味がありません。

だから、漏れがあってもダブっていても問題なし。

五行論は「世界は木・火・土・金・水の五つでつくられている」という古代ギリシャの原子説のようなことを言っているのではなく「人間の生活で重要なものは木・火・土・金・水の五つだ」ということを言っているんです。

 

つぎに、五行論では、同じ五行に分類された異なるカテゴリーのものとの間には「つながり」があると考えます。

なぜなら、同じ気だからです。

たとえば、臓器の肝と五官の目が同じ木なのは、目に問題がある(見えにくいなど)ひとは肝に問題があるひとが多いからです。

このように、「木のイメージに近いのはこれ・・・」というようにイメージや理屈で分類したのではなく、

他のカテゴリーの同じ五行とのつながりを観察して分類したのであって、

だから、五行論は有用なのです。

 

東洋医学と東洋占術

五行論の応用として挙げられるのは、ひとつは、東洋医学です。

鍼灸や漢方など、西洋医学では治療が難しい分野などで現代でも役立てられています。

これは人間の身体に関する術ですね。

もうひとつは、四柱推命算命学などの東洋占術です。

ひとそれぞれの使命や未来などを推し測って、よりよい人生のために現代でも役立てられています。

これは人間の精神に関する術ですね。

このほか、五行論は生活や文化などに広く影響を与えましたが、

科学が幅を利かせるようになって、ほとんどは忘れられていきました。

たとえば、一年の天候は、五行論など(五運六気)にもとづいて推し測っていましたが、いまはもっぱら天気予報ですよね。

では、なぜ、五行論は(東洋医学や東洋占術を除いて)すたれてしまったのでしょうか?

それは、西洋の科学の力に敗北したからですよね。

物質の世界は、神や人間とは関係なく、数理で動いています。

西洋では、近代になって(特に、ガリレオ・ガリレイの登場によって)精神と物質とは切り離して考えるようになり、物質の世界を質ではなくで探究するようになった結果、物質に働く数理を次々と発見して利用することができるようになりました。

一方、五行論はというと、ますます思弁的なものとなり(頭でっかちになり)、現実の観察とは離れていった結果、西洋に逆転されてしまったわけです。

しかし、人間中心の学である五行論は、現代にあっても有用だと思います。

なぜなら、科学では解決できない人間の身体や精神の問題を、五行論の応用である東洋医学や東洋占術では解決できることもあるからです。

ただ、忘れてはならないのは、

五行論は現実の観察のうえに成り立つものであって、

観察から離れた理屈だけの五行論は何の役にも立たないのだということです。

だから、相談者の現実を観ずに自分の知識だけで推し測ろうとする占いは、

無益だけでなく(相談者を誤った行動へ導くという点で)有害です。

肝に銘じたいと思います。