その後、幸福は①幸福な心理状態(happiness)と②生活が自分にとってよいものであること(well-being)の二つに分けて議論されるようになります。それまでの「幸福とは何か」という哲学的な議論だけではなく「どうすれば幸福(well-being)になれるか」という実践的な課題にもより目が向けられるようになったのです。
そして、心理学からも新しい主張がなされるようになりました。セリグマンは、生活や人生に対する主観的な満足度(happiness)と個人の特性や環境などとの関係から、幸福(well-being)を構成する要素には「ポジティブな感情」「没頭できる活動」「良好な人間関係」「人生の意味」「達成」の五つがある(PERMAモデル)と主張します(ポジティブ心理学)。
ここで、ポジティブな感情(Positive emotion)とは、喜び・楽しみ・快適・平安などそのものが幸福といえる心理になれる状態のことをいいます。具体的には、レジリエンス(困難な状況でも適応できる能力)を高めることや思考・行動の幅を広げること、ポジティブな感情につながる経験を増やすことなどが重要になります。
没頭できる活動(Engagement)は、フローやゾーンとも呼ばれる状態で、没頭できる/夢中になれるもの(仕事や趣味など)をみつけて楽しめるようになることが重要です。良好な人間関係(Relationship)は文字通りで、ハーバード大学の研究などでも幸福との密接な関連性が指摘されています。人生の意味(Meaning)は自分の人生にポジティブな意味や意義を見出している状態、達成(Accomplishment)は適切な目標を立てて進んでいる状態のことをいいます。
ポジティブ心理学では(理論というよりは)これらを改善することで幸福度を向上させるという実践的な研究が精力的に行われています。